台風10号に備えた海老芋の葉発送:日本料理の季節感と伝統を支える

最終更新日 2024年8月29日 by やまふじ農園

台風に備えて早めの海老芋の葉っぱ発送

2024年台風10号の進路予想図、日本列島に接近する様子が示されている。
2024年8月27日 台風10号が非常に強い勢力を保ちつつ、日本列島に接近。暴風・土砂災害など厳重な警戒が必要です。

急遽の発送準備

例年8月末に京都の「祇園いわさ起」さんへ海老芋の葉っぱを送っていますが、今年は特別な状況に直面しました。気象庁の発表によると、大型で強い台風10号が日本列島に接近しており、強風にあおられると海老芋の葉っぱはボロボロに破れてしまします。

この情報を受けて、いわさ起さんから緊急の電話連絡がありました。通常のスケジュールでは台風到着後になってしまう可能性があるため、葉っぱの品質を保つために早急な対応が必要となりました。

当初の計画では、連絡を受けてから翌日に葉っぱを摘み取り発送する予定でしたが、天候の急変リスクを考慮し、より安全を期すために当日午後から作業を開始することにしました。この決断により、新鮮な状態で葉っぱを届けられる可能性が高まりました。

1人前用の小さな葉っぱの需要

八ツ頭の葉っぱ
八ツ頭の葉っぱ

近年の飲食業界のトレンドとして、1人でお食事を楽しむお客様が増加しているそうです。いわさ起さんからは、この変化に対応するため、1人前に適した小さめの葉っぱの需要があるとの情報をいただきました。

海老芋の葉っぱは通常かなり大きく育つため、適当な小ささのものを見つけるのは困難でした。しかし、農園を歩き回る中で、先日ずいきを収穫した八ツ頭の畝に目をつけました。ここには、ちょうど良い大きさの若い葉っぱが多数生えており、1人用の料理に最適だと判断しました。

この発見により、大きな葉っぱと小さな葉っぱの両方を提供することができ、いわさ起さんの多様なニーズに応えることができました。

丁寧な下処理と発送

  • 海老芋の葉っぱ
  • 井戸水で葉っぱの灰汁をとる
  • 海老芋の箱に入れて発送

葉っぱの品質を最高の状態で保つため、摘み取りから発送まで細心の注意を払いました。

  1. 摘み取り:鋭利なハサミを使用し、葉っぱの根元からきれいに切り取りました。
  2. 洗浄:家にある井戸水を使用し、葉っぱの切り口から出る灰汁(あく)を丁寧に洗い流しました。
  3. 水切り:洗浄後は、余分な水分を軽く振り落としました。
  4. 梱包:清潔なビニール袋に、葉っぱが折れたり傷んだりしないよう丁寧に詰めました。
  5. 箱詰め:段ボール(海老芋用の出荷箱)に、ビニール袋に入れた葉っぱを慎重に配置しました。
  6. 発送:夕方、最寄りの郵便局へ持ち込み、ゆうパックで発送しました。翌日配達のため、新鮮な状態でいわさ起さんの元に届く予定です。

この一連の作業を迅速かつ丁寧に行うことで、台風の影響を受ける前に、最高品質の葉っぱをお届けすることができました。

日本料理における季節感の重要性

9月の料理と名月

いわさ起さんから伺った情報によると、9月になると、日本料理では「名月」をテーマにしたお料理が登場します。名月とは、秋の美しい月を愛でる行事で、これにちなんだ料理が作られます。この時期のお料理は、「芋名月」や「栗名月」と呼ばれ、その名の通り、里芋や栗といった秋の食材が使われます。また、「豆名月」とも呼ばれることがあり、枝豆なども取り入れられ、その季節を感じさせる料理に仕立てられます。

特に9月は、里芋の葉が料理の飾りとして非常に重宝されます。この葉は、料理を引き立てるだけでなく、秋の季節感を感じさせる重要な役割を果たします。例えば、8月のお盆の時期には、蓮の葉や葛の葉(秋の七草の一つ)も同様に料理にあしらわれますが、9月になると、お芋の葉はとても貴重な「掻敷(かきしき)」となるそうです。

こうして、お芋の葉はただの飾りではなく、料理全体の雰囲気を高め、季節を表現するための重要な要素となっているのです。

また、これらの料理を月見の宴に供することで、食事と自然鑑賞を融合させた日本独特の文化を体現しています。

日本料理において、葉っぱは単なる装飾以上の意味を持ちます。

  1. 掻敷(かきしき):料理の下に敷く葉っぱのことで、料理と器の間に置かれます。見た目の美しさだけでなく、料理の味や香りを引き立てる役割も果たします。
  2. 季節感の演出:9月はお芋の葉、8月のお盆には蓮の葉や葛の葉(秋の七草の一つ)を使用することで、その時季ならではの風情を演出します。
  3. 香りの付加:例えば、松葉や柚子の葉などは、その香りによって料理に深みを加えます。
  4. 食材との相性:葉っぱの選択は、主菜との相性も考慮されます。例えば、魚料理には笹の葉、肉料理には朴葉など、食材との調和が重視されます。
  5. 伝統と革新:古くから使われてきた葉っぱを現代的にアレンジすることで、伝統を守りつつも新しい表現を生み出すことができます。

日本料理の奥深さは、このような細部への配慮の積み重ねによって生み出されています。食材の選択、調理法、盛り付け、そして装飾に至るまで、すべてが季節と密接に結びついており、それが日本料理の独特の魅力となっているのです。この経験を通じて、料理人の技術や知識だけでなく、生産者との連携や自然との調和の重要性も再認識させられました。

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